滋賀県情報

川の下に川が流れている。長浜市の田川カルバートを見学。

田川カルバート出口側

滋賀県長浜市にある面白い地形を見てきました。それは、川(1級河川・高時川)の下に川(1級河川・田川)が流れているものです。言い換えると、川と川とが立体交差しているのです。高時川の下に田川をカルバート(暗渠)で通していることから、田川カルバートと呼ばれています。なぜ、このようになったのかも含めて、述べてまいります。

田川カルバートの場所

※田川カルバートはグーグルマップに登録されていないようですので、関連する水引神社の場所をお示ししています(水引神社については後述)。

田川カルバートは、滋賀県長浜市にあります。上の地図を見ると、上から下へと流れる高時川と右上から左へと流れる田川が立体交差していることがわかると思います。この場所が田川カルバートです。

なお、右から左へと流れる姉川の存在についても頭の片隅に入れておいてください。

補足です。

天井川…川床がまわりの平面地よりも高い川のこと。

高時川と姉川の下流部は天井川となっています。のちほどの説明で重要になってきます。

田川カルバートを見学

では、田川カルバートの現在の姿を紹介していきましょう。JR北陸本線の虎姫駅から30分ほど歩いて、訪問してきました。

田川カルバート上流側

まずは、田川カルバートの上流側(入り口)を見ようかと思ったのですが、雑草が茂っていてほとんど見られませんでした。カメラをアップして、かろうじて、カルバートの一部を見ることができました(水の流れは確認できず)。

ということで、下流側(出口)のほうへ向かうことにしましょう。

錦織橋

高時川の錦織橋をわたります。錦織橋の南側の地下に田川カルバートが通っています。

高時川

驚いたのですが、高時川には一切水が流れていません。私が訪問したときの滋賀県は、降水量が平年より極端に少ない状況となっていました。琵琶湖の水不足が懸念されているというニュースがありましたが、琵琶湖に水を供給する1つ1つの川も当然ながら、水無川状態になっているところもあるわけです。

田川カルバート

田川カルバートの下流側(出口)へ来ました。写真の上側に見えるのが、錦織橋です。これより、高時川の下に田川が流れていることは明らかだと思います。

ここから確認できるのは、田川カルバートは2連カルバートであるということです。

なぜ、こんな地形ができたのか

田川カルバート石碑
田川カルバート・記念碑

では、なぜ、川の下に川が流れているという珍しい構造になったのか。これは、幕末までさかのぼって、歴史的に説明いたします。

実は、かつては、高時川(天井川)と姉川(天井川)、田川(当時は流れがかなり緩やか)の3つの河川が、落合町地先の1カ所で合流していました

※落合町は、まさに、3つの川が落ち合っていることが地名の由来です。

田川
高時川の錦織橋南詰から見た田川

それ故、大雨が降ると、高時川と姉川の水が、田川に逆流して、田川の下流ではたびたび洪水が発生していたのです。近くには旧北国街道も通っていて、大名の通行にもたびたび支障がでたようです。

そのため、何とかしないといけないということで、1853年高時川が姉川に合流する場所を55mほど南に移動しました。今の場所と同様です。

しかし、目立った効果はでませんでした

田川・逆流防止水門
逆流防止水門の模型

次に、1862年新川をつくって、高時川の水を分水し、一部を、高時川の下を伏越樋(ふせこしひ)で通すようにしました。これが、川と川との立体交差のはじまりということになります。また、田川の本川が姉川と合流する場所には、逆流防止水門を設置しました。

しかしながら、木製でしたので、早い段階で腐っていきました。残念ながら、期待された効果はあまりありませんでした

田川カルバート説明版
田川カルバート説明版

そして、様々な紆余曲折があり、1885年にレンガ・石積みの田川カルバートが完成しました。2連カルバートで今の田川カルバートと極めて、近い形となりました。田川の全ての水を、高時川の下にあるカルバートへと通し、そのまま、琵琶湖へと流しました

そして、田川カルバートが鉄筋コンクリート製になったのは、1966年です。

水引神社

水引神社

最後に、水引神社を紹介しておきます。高時川の下に田川の新川を(伏越樋で)通す工事が難航したことから、水神をまつった神社をつくりました。それが、水引神社です。

田川カルバート近く・高時川の左岸にあたる場所にありますので、こちらも併せてご訪問いただければよいかと思います。

最後に

田川カルバートは、治水対策のために、先人たちが試行錯誤して誕生したものといえます。現在、異常なほどの大雨が降るようなこともあり、ダム建設など、治水対策にも注目が集まりつつあります。こうしたことから、田川カルバートといったものを見学する意義があると思いますので、ぜひ、ご訪問ください。

参考文献
①鵜野佑紀・岸田孝史(2014)「川の下を川が流れるー田川カルバートの歴史ー(虎姫地区の治水の歴史について)」『平成26年度近畿地方整備局研究発表会 論文集』
②虎姫町教育委員会編(2009)『ふるさと虎姫 田川の歴史を知る』

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