フランスのビアリッツで開かれていたG7サミットが閉幕した。今回のサミットは、第1回のサミット以来初めて、首脳制限の採択が見送られた(成果文書は発表されたようだ)。アメリカの自国第一の意向が強く表れた。
意見一致より議論を優先
今回は極めて異例のサミットとなった。1975年にフランスで開かれた第1回のランブイエサミット以来初めて、首脳宣言の採択が見送られたからである。アメリカとその他の国との考え方で大きな乖離があったからであろう。例えば、アメリカは自由貿易には否定的である。米中貿易戦争や日本との二国間協議の様子を見ていても明らかである。また、地球温暖化にも懐疑的な立場である。まさに、今が良ければ全て良しということなのだろう。こういった点でアメリカは、他の先進国と対立した。
アメリカと他国で意見対立が起こることを想定していた、議長国フランスのマクロン大統領は、あらかじめ首脳宣言を採択しないことを決めていた。首脳宣言を採択しても、守らない国(アメリカ)が出てきて、それが有名無実化してしまうからであろう。理解できないことはないが、最初から首脳宣言を採択しないことを決めてしまったことは違和感がある。首脳宣言は、やはり世界に対する大きなメッセージとなる。地球温暖化対策や自由貿易など合意できない点があることは重々承知しているが、北朝鮮問題や香港の問題など合意できる点も多々ある。このようなことだけでも、首脳宣言として発表すべきだったのではないか。
確かに、成果文書として合意できた点を発表した。ただ、これが世界に対する大きなメッセージになるとは誰もゆめゆめ思わないだろう。
漁夫の利を得るのは中国
この状況にウハウハしているのは中国であろう。中国の知的財産権侵害や産業補助金制度は看過できない問題である。アメリカのみならず、多くの先進国にとっても見逃すことのできない問題であろう。また、既存の「民主主義」に挑戦する態度を示しているのも中国である。G7各国は、結束して、中国に強いメッセージを発するべきであることは言うまでもない。G7各国が結束しているということを示すだけでも大きな成果なのである。
このような意味で、今回のサミットで中国は漁夫の利を得た。G7の国同士が対立していては意味がない。
G7サミットの意義は?
少なくともトランプ政権が継続している間は、G7サミットはうまく機能しないだろう。今回のG7サミットも、首脳宣言を採択しなかったという点において、サミットが機能したとは言い難い。
今回のサミットは、「アメリカVS他のG7諸国」という構図となった。本来は、「G7各国VS中国・ロシア・北朝鮮…」という構図となるべきである。G7諸国同士で非難合戦していては、前述した通り、中国などに大きなメッセージを発することができない。むしろ、漁夫の利を与えることとなる。
では、G7サミットに意義はあるのだろうか。確かに、アメリカのような国がいれば、G7サミットはうまく機能しない。しかし、G7サミットに意義がないというのは早計である。少なくとも、国際課題を確認するという点においては役に立つ。また、しかるべき相手(中国など)にメッセージを発するという点においても必要である(G7各国は「民主主義」という立場においては合意できている)。
自国第一の考え方が強いアメリカのトランプ政権とG7のその他各国はどのように付き合えばよいのだろうか。妥協点を探るという、平凡な回答しか私にはできない。努力・努力の積み重ねだろう。