これでいいのか、「美の滋賀」発信と文化館後継施設

夜の閉館中の近代美術館と文字

滋賀県の「美の滋賀」の施策関連について記します。まず、お断りしますが、私は、美術の専門家でもなければ、美術の愛好家でもありません。ですが、「美の滋賀」発信施策について、素人目線で見ても、納得しかねる点があるので述べることにします。

3つの美を1つの館で表現する予定だったが…

まずは、これまでの経緯を簡単に述べる必要があります。老朽化等で、平成20年から琵琶湖文化館が休館、平成29年3月から近代美術館も休館しています。とりわけ琵琶湖文化館においては、長期間の休館となり、県民が収蔵品を見られない状況が続いています。

そのため、近代美術館休館後、琵琶湖文化館の機能を(拡張工事を施した)近代美術館に移すという方針を打ち立てました。これが、これまでの新生美術館整備方針です。この新生美術館では、滋賀の「3つの美」を発信することを検討していました。「3つの美」は、「神と仏の美」「アール・ブリュット」「近代・現代美術」です。図に示すと、以下のような形になると思います。

滋賀の3つの美

このように、3つの美を融合させることにより、新たな価値を生み出そうとしたということになります。相乗効果を期待したということになります。素人の目線からで恐縮ですが、この方針は、素晴らしいものだと思っています。

しかし、この方針は頓挫してしまいました。原因は、2017年の入札不落です。県議会で建設費を47億円に収めると約束していましたが、47億円に収めることができないと判断し、この方針を事実上破棄する形となりました。

結局1つの館で表現しない

そして、琵琶湖文化館機能継承方針として、新たな方針がまとめられました。それによりますと、「3つの美」を1つの館で表現するということはなくなってしまいました。「近代・現代美術」と「アール・ブリュット」は近代美術館で「神と仏の美」は文化館後継施設(場所は未定)発信することになりました。下に、図で示します(滋賀県が公開しているものとほぼ同じです)。

美の滋賀発信施策

一応、「美の滋賀」という形は残っていますが、「神と仏の美」の立ち位置が大きく変わっていることがわかります。また、文化財という新たな文言が出てきました。

文化財保存等が主な理由

では、なぜ、「美の滋賀」を1つの館で表現しなくなったのでしょうか。滋賀県の説明を簡単にまとめると、文化財の置かれた環境が厳しいからということになります。私も、文化財の置かれている環境が厳しいことは賛同します。「琵琶湖文化館機能継承方針」に詳しく記されていますので、詳しくは、そちらをご覧ください。

しかし、埋蔵文化財センターというのが、文化ゾーン内に既にあります。埋蔵文化財センターが存在するにもかかわらず、あえて、新たな文化館継承施設をつくって同じような仕事をする必要があるのでしょうか。「琵琶湖文化館機能継承方針」を見ただけでは、その点について腑に落ちませんでした。

どうも、私には、もともとの方針が頓挫したが故の埋め合わせに見えるのですが…。

なお、私は、イベントか何かで、埋蔵文化財センターにて職員さんが仕事をしている風景を見学したことがあります。そこで感じたことですが、埋蔵文化財センターは、「活用・発信」に問題があると思います。展示品が置かれているのは、1階ロビーだけですから。少し話題がそれました。失礼しました。

「美の滋賀」をしっかり発信できるのか

吹き出し

一方で、「美の滋賀」発信については、新たな方針にも残っています。滋賀県を1つの美術館と見立て、「美の滋賀」を発信したいということでしょう。近代美術館と文化館継承施設を連携させるということですが、難しいと思います。なぜなら、来訪者が、それぞれが独立の施設であるという認識を抱くことは、容易に想像できるからです。「美の滋賀」発信が中途半端になってしまうかもしれません。

費用も増える可能性

右上矢印

近代美術館以外に、もう一つの施設をつくることになるので、費用がかさむ可能性があります。まず、建設費47億円という予算では収まらないでしょう。既に、近代美術館の老朽化対策で11億円以上かかっています。約36億円で文化館継承施設をつくることができるでしょうか、厳しいのではないでしょうか。県によると、47億という数字にはこだわらないようですが、そのようなことをしてしまうと、議会との約束を反故にするということになります。

また、将来的にも費用が高くつく可能性があります。1つの施設にすることにより、少なくとも、固定費(光熱費、維持費等)の削減は期待できました。しかし、文化館後継施設をつくってしまえば、そのような効果は期待できません。

県民が自慢のできる施設ができるのか

クエスチョンマーク

「美の滋賀」で観光振興を図ろうとするならば、県民が自慢のできる施設をつくらねばなりません。3つの美を1つの館で表現する方針と「アールブリュット」「近代美術」と「仏教美術」を事実上切り分ける方針。県外の人に自慢をするなら、どちらを選ぶでしょうか。もちろん、私は前者(3つの美を1つの館で表現する計画)です。

新たな計画で「県民が自慢のできる施設をつくる」ということは、難しいのではないかと私は思っています。滋賀県は、今の計画で本当によいのか、県民や議会に問うてみてください。同意が得られるならば、前に進めてください。