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どうする、彦根城のラジオ体操。滋賀の指導士が考える

2022年5月15日

彦根城

彦根城天守前で朝6時30分からラジオ体操が行われています。30年以上続いており、私も、かなり前より把握していました。しかしながら、京都新聞や中日新聞の報道によると、文化財保護の観点から、彦根市が天守前で行っている早朝のラジオ体操をやめるように要請しているとのことです。この問題について、滋賀県民の公認ラジオ体操指導士が考えていきます。

5月16日:対立が決着しました。更新情報を、追記しております。

彦根城では6時半からラジオ体操を実施

ラジオ体操をする5人の子供

彦根城では、毎朝6時30分よりラジオ体操が実施されています。当然ながら、ラジオ体操指導士の私は、この問題が出てくる前からこのことは把握しております(居住地・大津からですと始発で彦根に行っても間に合わないので、参加はしたことがありません)。

天守前でラジオ体操を行えるとは、何とも、すがすがしい朝を迎えられることでしょう。天守前からは彦根城のみならず、琵琶湖も見られます。とても素晴らしいラジオ体操会だと、個人的には思います。

実施場所をもう少し詳しく述べると、彦根城の天守前です。彦根城の開場時間は、8時30分本来ですと、入ることができないとされているわけですが、実は、天守前へは開場前より入ることができます。また、そもそも論ですが、彦根市民は、原則、入場無料です(65歳以上 or マイナンバーカード保有等の条件有)。ただ、開場前の入場は、グレーです。

朝の6時半という時間は、NHKラジオ第一放送で、ラジオ体操が放送される時間です。多くのラジオ体操会は、この時間にラジオ体操を実施しています。

なお、NPO法人全国ラジオ体操連盟のラジオ体操会の会場に、彦根城天守前は登録されていません。

文化財保護のため、時間前に天守に入らぬよう市が要請

彦根城

ここで問題になっているのは、開場時間前から、ラジオ体操するために、天守前に入るという行為です。この行為は、文化財保護の観点からすると望ましくないということになります。たとえ、ラジオ体操をする人は文化財を傷付けないとしても、彼らに交じって悪意ある人が入って来る可能性は否めません。

彦根城は、2024年に世界文化遺産登録を目指しています。彦根市のみならず滋賀県も、予算を確保して、頑張っています。

たびたび、各地で文化財保護法違反事件も発生していることを考慮すると、世界遺産を目指すためには、より厳密に防犯・文化財保護に力を入れていく必要がありそうです。

追記:5月17日より、門の施錠が徹底されるようになります。開場前に入場すると、不法侵入となります。

ただ、本音を言わせていただくと、開場時間内でも文化財に傷つけることは可能です。やはり、滋賀県民だけあって、彦根城には何回か訪問しているのですが、天守の柱には、落書きならぬ落彫りがなされている箇所が目立ちました。これは明らかに開場時間内に傷つけられたものです。

防犯や文化財保護を理由にするのであれば、開場時間内外ともに、現在とは比べものにならないほど、警備や監視に本腰を入れていかねばなりません

実施する市民と彦根市が対立

ラジオとラジオ体操をする人

こうしたことから、30年以上、天守前でラジオ体操を継続してきた市民たちと文化財保護に力を入れたい彦根市とが対立しているわけです。

私が新聞で見た報道によりますと、彦根市はこれまで黙認してきたが、最近になって、ラジオ体操を開場前に、天守前で行わぬよう要請したとのことです。これに対し、市民らは、「天守で健康づくりをする会」を結成して、市に陳情を行ったということです。

私は新聞チェックをしているので紙面で確認したのですが、インターネットでも配信されている記事のようですので、ご存じでない方は、一度、調べてみてください。

この問題をどう見るか

では、この問題をどのように見たらよいでしょうか。滋賀県に住むラジオ体操指導士の個人的見解を書いておきます。

朝のラジオ体操は気持ちがいい

ひらめき

まず、大前提として、ラジオ体操を行うことは、健康づくりの観点からは、素晴らしいことです。ラジオ体操をすることのみならず、体操会場まで歩くことも、運動です。また、朝にラジオ体操を行うことは気持ちのよいことです。

さらに、ラジオ体操会では、参加者同士の交流もあり、一種のサードプレイスとなっています。地域コミュニティー形成にも役立っています。

朝に屋外でラジオ体操を行うことは、否定しません。むしろ、ラジオ体操を普及する側からすると、多くの人に朝にラジオ体操をやってほしいと思っています。

市はなぜ黙認?市の対応に問題あり

吹き出し

報道をもとに、考えていきます。

最初に、彦根市は30年以上にわたり、天守前でラジオ体操を行っていることを黙認してきたとのことです。まず、この対応に問題があります。彦根城が国宝になったのは、昭和20年代です。当然、30年以上前から、文化財保護は重要な課題だったはずです。

したがって、本来ならば、開場前にラジオ体操を行っているということを把握をした時点で、やめさせなければなりませんでした

しかし、市はそうした対応を取らなかったということなのです。ラジオ体操会は、地域住民の健康に資するものであり、かつ、一種のサードプレイスとなっていることがあり、市もこうしたポジティブな側面も意識していたのかもしれません。

また、30年以上前ですと、比較的、彦根城の管理が緩かったとも考えられます。

そうした中で、今になって、早朝に天守前でラジオ体操をやめるように要請したのです。長年、ラジオ体操をやってこれた市民からすると、寝耳に水だと思います。仮に、私が当事者だったら、今さら何だと、思ってしまうかもしれません。

彦根市の対応には問題がありました。

発想を少し変えます。

彦根市は市民の行為を黙認していたということは、市民側は、使用の許可をとっていなかったということになるのでしょうか。私有地だったら構わないのですが、公共の場所ですので、たとえ、10分間のラジオ体操でも、申請をして使用許可をとっておくべきでした。

私は、滋賀県某所の公園でラジオ体操会を主催していますが、会場を管理する指定管理者を通じて、自治体に使用許可をもらっています。

ただし、彦根城で何かあったときの責任は重大

火の玉

少し話題を変えますが、大阪城でも、天守前でラジオ体操が行われています。大阪城ラジオ体操会は、私たち愛好家からすると、ラジオ体操の聖地のような場所です。

しかし、大阪城の関係者にとっては恐縮ですが、彦根城は、大阪城よりもずっと価値のあるお城です。というのも、現在、国宝に指定されており、世界遺産も目指せるお城だからです。

したがって、開場時間以外に敷地に人が入ることは、文化財保護や防犯の観点からは、何としても避けたいところです(前述した通り、同時に、警備や監視をもっと強化すべき)。たとえ、ラジオ体操を実施する方々は彦根城を傷つけることはしなくても、彼らに交じって悪意ある人が入り込む可能性はあります。

ラジオ体操を行う市民が悪くなくても、ラジオ体操を実施していることによって、何らかの事件が発生する可能性もあります。仮に、こうしたことが起こると、責任が問われます。

また、彦根城を管理する市や彦根城運営管理センターからすると、ラジオ体操の実施が彦根城の警備を難しくしていると感じていることでしょう。こうしたもとで、仮に、彦根城で何かおこったときは、市の責任も重いといえます。

文化財保護と意識が、以前と比べて変わったといえるのかもしれません。私も、ブログやYouTubeで滋賀県内の様々な文化財を発信してきていますが、「文化財を守れ」という単純な意識だけは世間で強くなってきているような気がします。

といっても、知名度の低い文化財は忘れ去られているのが現状ですが…。

落としどころはないのか

ラジオ体操指導士としては、できる限り、ラジオ体操を行う市民の意見を尊重してほしいと思います。参加者の方々も、彦根城を思う気持ちが強いからこそ、天守前でラジオ体操を行いたいと思っています。30年間、大きな事件は起こっていないのだから、、、といっても、彦根市からするとそのようにはいかないのでしょう。

となると、落としどころを見つけなければなりません。落としどころとして有力なのは、やはり、彦根市が主張している通り、会場変更です。彦根市は、お堀の内側にある金亀公園で早朝のラジオ体操を行ってほしいといっています。金亀公園は、彦根城も見られる公園です。

天守前でラジオ体操を行うのであれば、8時30分の開場後、NHKラジオ第2の8時40分の放送(月~土・夏季を除き、NHKR1朝6時半の放送の再放送)にあわせて行うということも考えられないことはありません。ただ、これについては、観光客にも配慮する必要があり、少し難しいかもしれません。

もしくは、いっそのこと、6時開場にするといったこともありかもしれません(天守へは通常通り8時半を維持)。世界遺産・清水寺は6時開門ですので、早朝から開けている先例はあります。人件費がかかってくることは間違いありませんが…。これは、現実的ではない気もします。

そして、何より、今回の騒動を機に、当局側(彦根市)とラジオ体操を行う市民とが、win-winの関係になったらよいなあと思っています。これまでは、市が体操を行うことを黙認するという、なんとも、微妙な関係でした。

ただ、今回の問題で、互いに、落としどころを見つけられたら、彦根市も市民がラジオ体操を行っているということを把握することになりそうです。これを機に、彦根市もラジオ体操の実施支援をして多くの市民の参加を促すと、市民の健康寿命を延ばすことに資すると思います(もちろん、文化財保護行政とは一線を画すことになります)。

(ぼやき)思えば、彦根市はラジオ体操ではなく金亀体操を普及していましたねぇ~。

最後に、無料で、天守前に行けるのは不公平だという意見があり、報道もなされていましたが、ラジオ体操の参加者は、おおかた、彦根市民でしょう。彦根市民は、原則、彦根城へ無料で入ることができます(ただし、マイナンバー等確認有)。

公平性を理由にラジオ体操をやめるように要請することは、少し根拠が薄いと感じます。むしろ、彦根市民だけ彦根城への入場無料という施策自体が揺らぐことになりそうです。彦根市としては、防犯・文化財保護の観点から、しっかりと説明すべきです。

とはいえ、ラジオ体操はOKで、散歩はNGという問題はないわけではないですが(散歩でも入れるということを聞いたことがあるような気もしますが、、、当ブログ管理人は滋賀県民なのでこうした話を人づてで聞くことがあります)。

追記:5月17日より、開場前に敷地に入ることができないようになります。市民の方々は、二の丸の駐車場でラジオ体操を行うことにしたということです。

彦根市におきましては、こうした形でラジオ体操をやめさせることになりますので、彦根城の管理をより徹底してください。価値あるものとして後世に伝えられていくことを祈っています。

最後に

滋賀県内で、彦根城と同じように、ラジオ体操会を主催するラジオ体操指導士として、この問題は、取り上げずにはいられませんでした(直接の、当事者ではないにもかかわらず、いろいろと記してしまい、失礼しました)。

ラジオ体操を行っているのは、身勝手な高齢者だという意見もあるようですが、私は20代です。また、実際、私が主催する体操会には、現役世代の方の参加もありますので、決して、高齢者だけの問題ではありません(実際、私が許可を得てラジオ体操を行っている会場も、実は、歴史ある場所なので…)。一番良いのは、落としどころを見つけることです。お互いが納得できる案がでてこればよいと思います。

最後に一点。いろいろと報道がなされていますが、ラジオ体操の悪いイメージだけが世間にまとわりついてしまうことは何としても避けなければなりません。ラジオ体操は、一つ一つの動きに意図があって、高い運動効果を期待できます。皆様もぜひ実践いただければと思います。

  • この記事を書いた人

未だ定まらざる

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