滋賀県民にとって、7月1日といえば、、、当然、「びわ湖の日」です。
琵琶湖に面していない、甲賀市、湖南市、蒲生郡、愛知郡、犬上郡も、もちろん、7月1日は「びわ湖の日」です(これらの自治体も、河川を通じて、琵琶湖とつながっています。)。
そして、「びわ湖の日」といえば、「清掃の日」と思われる方も多いのではないでしょうか。
確かに、「びわ湖の日」、ならびに、その前後の日に、各地で清掃活動が行われることは間違いありません。
しかし、「びわ湖の日」が制定された背景を見てみますと、深い歴史があることがわかってきます。
なぜ、7月1日が「びわ湖の日」で、清掃を行うのか、、、ということもわかってくるでしょう。
「びわ湖の日」の由来について、詳しく解説いたします。
7/1は「びわ湖の日」
改めて、7月1日は「びわ湖の日」です。県外の方など、初めて知ったという方は、ぜひ、覚えてください。
滋賀県では、7月1日、ならびに、その前後の日に、清掃活動が行われます。
さらに、滋賀県は、7月1日(びわ湖の日)から8月11日(山の日)までは、「びわ活」重点期間と定めています。
これらの期間、滋賀県は県民に対して、琵琶湖と関わる様々な活動(びわ活)への参加を促しています。
琵琶湖に関わる方法は、多様です。普段、琵琶湖や自然と触れ合う機会があまりないという方は、「びわ湖の日」を機に、ぜひ、「びわ活」に参加してみてください。
滋賀県は、毎年、「びわ活ガイド」を作成しておりますので、そうしたものもご参考ください。
「びわ湖の日」の歴史と由来
それでは、本題に入ります。「びわ湖の日」の歴史と由来について解説していきます。
年代 | 内容 |
---|---|
1960年ごろ~ | 琵琶湖の汚染(富栄養化)が深刻に。 |
1977年5月 | 琵琶湖で大規模な赤潮が発生。 |
1980年7月1日 | 「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」(琵琶湖条例)が施行 |
1981年7月1日 | 琵琶湖条例施行1周年を記念して、7/1がびわ湖の日に。 |
2021年7月1日 | びわ湖の日40周年。 |
これから、述べることを、簡単に年表にしてみました。
詳しく見てまいりましょう。
1960年頃から汚染が深刻化
琵琶湖では、1960年代から湖岸地域の開発が急速に進みました。
そうしたこともあり、湖岸の工場や家庭から排水が琵琶湖に流れ込み、琵琶湖の水質汚染が深刻化しました。
水質汚染の原因の主が富栄養化です。富栄養化とは、湖沼などにおいて、生活排水や工業排水、農業廃水に含まれる窒素やリンなどの栄養塩類が増えることです。
もしかしたら、富栄養化は、湖沼の栄養が増えるのだから、良いことだと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際は、その逆です。
富栄養化により、植物プランクトンが増え、生態系に悪影響を及ぼすことがあります。また、悪臭を発することもあります。
赤潮やアオコの原因も、富栄養化による、植物プランクトンの増加です。
滋賀県で石けん運動が盛り上がる
リンを含む合成洗剤の使用をやめ、粉せっけんを使おうと訴えたのが石けん運動です。
昭和45年頃から、婦人団体を中心に石けん運動が行われてきました。
ただ、1977年(昭和52年)に大規模な赤潮が発生して以降は、自治体や市民団体、農協など多くの県内の団体も賛同し、県民に広がっていきました。
それを機に、滋賀県は琵琶湖条例を制定することになったのです(後述)。
琵琶湖条例は、まさに、石けん運動という、草の根の市民運動を機に、制定されたということになるのです。
琵琶湖条例が制定される
石けん運動の高まりを受け滋賀県は、1980年(昭和55年)7月1日に「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」(琵琶湖条例)を施行しました。
リンの排出規制などが明記されています。以下に抜粋を記します。
(使用の禁止等)
第17条 何人も、県内(琵琶湖に流入しない河川の流域その他の地域で規則で定める区域を除く。以下この章において同じ。)において、りんを含む家庭用合成洗剤を使用してはならない。
2 何人も、県内に住所または居所を有する者に対し、りんを含む家庭用合成洗剤を贈つてはならない。
滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例
上記の通り、リンを含む家庭用合成洗剤の使用や贈与が禁止されました。
また、18条においては、リンを含む家庭用合成洗剤の販売が原則禁止されました。全国に先駆けた規制で、大変意義のある条例です。
さらに、その他、工場排水の規則や肥料・糞尿の適正処理などが定められました。
そして、琵琶湖条例が制定されて1年を記念して、翌年の1981年7月1日から7月1日をびわ湖の日とすることを決定しました。
上に示しましたのは、年度別の赤潮発生状況のグラフです。
ご覧の通り、琵琶湖条例の施行以降、赤潮の発生は減少傾向にあることがわかります。近年は、琵琶湖で赤潮が発生したということは、聞いたことがありません。
なお、一方で、アオコについては、水の交換が悪い港などを中心に、局地的ながら、毎年夏に、発生しております。
ただし、琵琶湖の広範囲で、アオコが発生するという事例は、近年は、確認されていません。
琵琶湖を大切にしよう
琵琶湖は、滋賀県民にとって切っても切り離せない湖です。
琵琶湖に面していない地域の方からすると、遠い存在かもしれませんが、滋賀県のほとんどの地域は、河川を通じて、琵琶湖と接続しています。
「びわ湖の日」に何をすればよいかわからないという方は、まず、琵琶湖についての理解を深めてみてはいかがでしょうか。
実際に琵琶湖を見てみるのもヨシ、琵琶湖博物館に行って勉強するのもヨシ、「びわ活」に参加するのもヨシ、琵琶湖の理解を深める方法は様々です。
そのうえで、ポイ捨てをしないことや汚水を直接的に川や琵琶湖に流さないなど当たり前のことを守りましょう。
地域の清掃(ex:琵琶湖市民清掃)に参加することも琵琶湖を守ることにつながります。
びわ湖の日を県民の休日にすべきなのか?
最後に、「びわ湖の日」を県民の休日にすべきだという動きについて触れておきます。
県民の祝日とは、県が独自に定めた休日のことです。
県民の休日というと、沖縄県の「沖縄慰霊の日」(6月23日)を思い浮かべる方が多いと思います。
また、県単位ではありませんが、広島市は8月6日を「平和記念日」として休日にしています。
同じように、滋賀県も、「びわ湖の日」を県民の休日にしようとする動きがあります。
「びわ湖の日」を県民の休日にするメリットとデメリットをまとめました。
メリット
・県民が琵琶湖についての理解を深められる。
・県内外に琵琶湖の魅力を発信することができる
・琵琶湖に関わるボランティアに携わる機会をつくることができる など
デメリット
・行政機関の閉庁に伴う悪影響が懸念される。
・経済活動がストップすることになる。
・県民の理解を十分に得られない。
現時点においては、「びわ湖の日」を休日にすることに対して、県民から十分な理解が得られないでしょう。
滋賀県南部地域においては、県外からの転入者が増えているので、なおさらのことでしょう。
まずは、「びわ活」への参加人数を増やすなど、多くの県民が琵琶湖と触れ合う機会を増やしていくことが大切になってくるでしょう。