びわ湖の日は清掃の日だけではない。実は深い歴史があります。

琵琶湖と滋賀県

7月1日はびわ湖の日です。以前、7月1日を県民の祝日にすべきか否かという議論があったことも記憶に新しいです。滋賀県の多くの地域では、びわ湖の日前後に、琵琶湖一斉清掃が行われます。そのため、滋賀県民の中にはびわ湖の日を清掃の日と思われている方が多いと思います。確かにその通りですが、びわ湖の日には、実は深い歴史があります。

2021年で、びわ湖の日、40周年です。

びわ湖の日は1981年から始まった

矢印と文字

1980年(昭和55年)7月1日に、琵琶湖の汚染を改善すべく「 滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例 」(琵琶湖条例)が施行されました。その翌年に、琵琶湖条例の施行1周年を記念して、7月1日を琵琶湖の日と定められました。さあ、詳しく見ていきましょう。

1960年頃から汚染が深刻化

琵琶湖では、1960年頃から湖岸地域の開発が急速に進みました。その影響で、湖岸の工場や家庭から排水が琵琶湖に流れ込み、琵琶湖の水質汚染が深刻化しました。

水質汚染の原因の主が富栄養化です。富栄養化とは、故障などにおいて、生活排水や工業排水、農業廃水に含まれる窒素やリンなどの栄養塩類が増えることです。

栄養が増えることは、良いことだと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、実はゆゆしきことです。富栄養化により、植物プランクトンが増え、生態系に悪影響を及ぼすことがあります。また、異臭を発することもあります。赤潮やアオコの原因も、富栄養化による、植物プランクトンの増加です。

赤潮
イメージ



1977年(昭和52年)5月に、琵琶湖で大規模な赤潮が発生
しました。水道水の異臭やアユなどの大量死が発生し、問題となりました。赤潮の原因の1つに、合成洗剤に含まれるリンであることが分かったのです。それにより、石けん運動が盛んになりました。

滋賀県で石けん運動が盛り上がる

リンを含む合成洗剤の使用をやめ、粉せっけんを使おうと訴えたのが石けん運動です。昭和45年頃から、婦人団体を中心に石けん運動が行われてきましたが、1977年(昭和52年)に大規模な赤潮が発生して以降は、自治体や市民団体、農協など多くの県内の団体も賛同し、県民に広がっていきました。それを機に、滋賀県は琵琶湖条例を制定することになりました。

琵琶湖条例が制定される

石けん運動の高まりを受け滋賀県は、1980年(昭和55年)7月1日に「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」(琵琶湖条例)を施行しました。 リンの排出規制などが明記されています。以下に抜粋を記します。

(使用の禁止等)

第17条  何人も、県内(琵琶湖に流入しない河川の流域その他の地域で規則で定める区域を除く。以下この章において同じ。)において、りんを含む家庭用合成洗剤を使用してはならない。

2  何人も、県内に住所または居所を有する者に対し、りんを含む家庭用合成洗剤を贈つてはならない。

滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例

上記の通り、リンを含む家庭用合成洗剤の使用や贈与が禁止されました。また、18条においては、リンを含む家庭用合成洗剤の販売が原則禁止されました。全国に先駆けた規制で、大変意義のある条例です。また、その他、工場排水の規則や肥料・糞尿の適正処理などが定められました。


そして、琵琶湖条例が制定されて1年を記念して、翌年の1981年7月1日から7月1日をびわ湖の日とすることを決定しました。



以下に、年度別の赤潮発生状況のグラフを添付します。見て分かる通り、琵琶湖条例の施行以降、赤潮の発生は減少傾向にあることがわかります。

琵琶湖の年度別赤潮発生状況
出典:滋賀県ホームページプランクトン観測室「淡水赤潮・アオコの年度別発生状況」

琵琶湖を大切にしよう

琵琶湖は、滋賀県民(とりわけ湖岸地域に住む人々)にとって切っても切り離せない湖です。まずは、琵琶湖についての理解を深めることが重要です。

そのうえで、ポイ捨てをしないことや汚水を直接的に川や琵琶湖に流さないなど当たり前のことを守りましょう。

地域の清掃(ex:琵琶湖一斉清掃)に参加することも琵琶湖を守ることにつながります。

最後に、今も、多くの洗剤に合成界面活性剤が使われています。直接、川などに流すと環境汚染の原因になるので注意しましょう。

ところでびわ湖の日を県民の休日にすべきなのか?

ごろ寝しているおじさん

県民の休日というと、沖縄県の「沖縄慰霊の日」(6月23日)を思い浮かべる方が多いと思います。同じように、滋賀県も、びわ湖の日を県民の休日にしようとする動きがあります。確かに、琵琶湖についての理解を深めることは重要ですが、休日にする必要はないと思います。

「沖縄慰霊の日」は、沖縄戦の戦没者の霊を慰めるとともに平和を祈る日として多くの国民から理解が得られていますが、びわ湖の日を県民の祝日にすることは国民から理解が得られるとは思えません。

参考ホームページ
滋賀県ホームページ琵琶湖の日(https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kankyoshizen/biwako/11316.html)外部リンク